じはんきプレス
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テクノロジー2026.04.28| 編集部

【2026年版】自販機のCO2排出量(Scope3)算定と情報開示の実務ガイド

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はじめに:自販機事業者にも求められるCO2開示の時代

「温室効果ガスの排出量を開示してください」——かつては大企業にのみ向けられていたこの要求が、今では中小の自販機オーナー・オペレーターにも届き始めています。

背景にあるのは、サプライチェーン全体でのGHG(温室効果ガス)開示要求の拡大です。大手飲料メーカーや小売チェーンが「取引先を含めたScope3の排出量を把握・削減する」という方針を打ち出すことで、その傘下にある自販機事業者も環境情報の開示を求められるケースが生まれています。

また、2026年からは東証プライム上場企業へのTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)準拠の情報開示が義務化されており、関連する自販機設置先企業からサプライチェーン開示の協力を求められる場合もあります。

本記事では、自販機事業者が知っておくべきCO2排出量(特にScope3)の算定方法と開示実務を解説します。


第1章:Scope1・Scope2・Scope3とは何か

GHGプロトコルの基本概念

温室効果ガス(GHG)の排出量は、国際的な会計基準であるGHGプロトコルに基づいて3つのスコープに分類されます。

スコープ 内容 自販機事業での例
Scope1 自社の直接排出 自社車両(補充トラック等)の燃料燃焼
Scope2 エネルギー起源の間接排出 自販機が消費する電力由来のCO2
Scope3 バリューチェーン全体の間接排出 商品の製造・輸送・廃棄等

📌 チェックポイント

自販機事業のCO2排出で最も大きいのは「Scope2(自販機の電力消費由来)」です。全国約400万台の自販機が年間消費する電力のCO2換算は数百万トン規模に上ります。省エネ機種への更新は最も直接的なCO2削減策です。


第2章:自販機事業のCO2排出量の算定方法

Scope1の算定(自社の直接排出)

自販機事業でのScope1に該当する主な排出源:

  • 補充・メンテナンス車両(ガソリン・ディーゼル)
  • 自社所有のフォークリフト・倉庫設備(LPG等)

計算式:

Scope1排出量(kg-CO2)
= 燃料消費量(L)× 排出係数(kg-CO2/L)

主な排出係数(環境省公表値・2024年度版):

  • ガソリン:2.322 kg-CO2/L
  • 軽油:2.589 kg-CO2/L
  • LPG:2.999 kg-CO2/kg

例:年間ガソリン10,000L消費の場合 10,000L × 2.322 = 23,220 kg-CO2(約23.2トン-CO2)

Scope2の算定(電力消費由来の排出)

自販機のScope2は、自販機が消費する電力量から算定します。

計算式:

Scope2排出量(kg-CO2)
= 電力消費量(kWh)× 電力排出係数(kg-CO2/kWh)

電力排出係数は電力会社・契約メニューによって異なります(環境省が毎年公表)。

一般的な目安(2024年度):

  • 全国平均:約0.441 kg-CO2/kWh
  • 再生可能エネルギー100%の場合:0 kg-CO2/kWh

例:自販機1台・年間1,500kWh消費の場合 1,500kWh × 0.441 = 661.5 kg-CO2(約0.66トン-CO2/台)

10台運営の場合:約6.6トン-CO2/年

💡 電力排出係数の確認方法

電力会社ごとの排出係数は環境省の「電気事業者別排出係数一覧」(毎年更新)で確認できます。再エネ電力(グリーン電力)を購入している場合は別途計算が必要です。

Scope3の算定(バリューチェーン全体)

Scope3は15のカテゴリに分類されていますが、自販機事業で特に関係するカテゴリは以下です。

カテゴリ 自販機事業での内容
カテゴリ1:購入した製品・サービス 補充する飲料・食品の製造段階のCO2
カテゴリ4:輸送・配送(上流) 仕入れ商品の自社への輸送
カテゴリ11:販売した製品の使用 —(自販機自体が製品を「使用」するわけではない)
カテゴリ12:販売した製品の廃棄 販売後の容器(缶・ペット等)の廃棄・リサイクル

カテゴリ1(仕入れ商品の製造段階)の簡易算定:

飲料製品1本あたりのCO2排出量(ライフサイクルアセスメント値)は、メーカーが公開しているCFP(カーボンフットプリント)データを活用します。主要飲料メーカーは主力商品のCFPを公開しています。


第3章:自販機事業のCO2排出量の全体像

モデルケース:自販機10台を運営するオーナーのGHG排出量試算

排出源 算定値(トン-CO2/年)
Scope1(車両燃料):3,000L/年 約7.0 t-CO2
Scope2(自販機電力):15,000kWh/年 約6.6 t-CO2
Scope3(仕入れ商品製造):年間販売分 別途計算
Scope1+2 合計 約13.6 t-CO2

削減ポイントの優先順位

削減策 削減ポテンシャル コスト
省エネ自販機への更新 Scope2を30〜60%削減 中〜高
再エネ電力への切り替え Scope2を最大100%削減 低〜中
EV・HV補充車両への切り替え Scope1を20〜60%削減 中〜高
配送ルートの最適化 Scope1を5〜20%削減
カーボンオフセット(J-クレジット等) 算定後の残余排出を相殺 低〜中

第4章:情報開示の実務

どこで・何を開示するか

自販機事業者がGHG排出量を開示する主な場面:

開示先 内容 形式
取引先(飲料メーカー・施設等)からの要求 Scope1+2の開示、または全Scope 任意の様式(CSVやExcel等)
自社ウェブサイト 環境方針・CO2削減の取り組み HTML・PDF
ESGレポート・統合報告書 Scope1+2+3(可能な範囲) PDF
CDP(気候変動情報開示プラットフォーム)への回答 Scope1+2+3 CDP所定のフォーム

小規模事業者向けの簡易開示テンプレート

大規模な開示システムが不要な小規模事業者向けに、環境省が提供する「サプライチェーン排出量算定・開示ガイドライン」には簡易版のテンプレートが用意されています。

最低限の開示内容:

【環境情報開示(◯◯自販機事業部 2025年度)】
Scope1排出量:◯ t-CO2
Scope2排出量:◯ t-CO2
Scope1+2合計:◯ t-CO2
対前年比:-◯%(主な削減要因:省エネ機種への更新)
削減目標:2030年までにScope1+2をベース年比30%削減

📌 チェックポイント

開示は「完璧」でなくても価値があります。「把握している・削減に取り組んでいる」という姿勢の表明自体が、取引先・ステークホルダーへの信頼構築につながります。まず「やってみること」を大切にしましょう。


第5章:第三者検証・認証の取得

第三者検証とは

GHG排出量データの信頼性を高めるために、外部の認証機関による「第三者検証」を受けることができます。

主な第三者検証機関:

  • DNV(ノルウェー)
  • Bureau Veritas(仏)
  • 日本品質保証機構(JQA)
  • インターテック

検証費用は規模・範囲によりますが、数十万円〜数百万円程度が一般的です。小規模自販機事業者には現実的でないケースもありますが、大規模事業者・上場企業の関連会社等では検討の価値があります。

SBT(Science Based Targets)への取り組み

企業の気候変動対策に関して、科学的根拠に基づいた目標設定(SBT)への取り組みも注目されています。SBT認定を受けることで、脱炭素への本気度を対外的にアピールできます。


結び:CO2開示は「後回し」にできない経営課題

2026年以降、GHG排出量の開示は上場企業だけでなく、サプライチェーンを通じて中小企業にも波及しています。自販機事業者も例外ではありません。

「まだ小さい会社だから関係ない」ではなく、「今から始めることで、将来の取引・信頼・競争力につながる」という発想で、CO2算定・削減・開示のスタートラインに立ちましょう。

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