日本一の乗降客数を誇るJR東日本の駅構内——「エキナカ」は、自販機ビジネスにとって国内屈指の一等地です。そのエキナカ自販機を担うのが、JR東日本グループの自販機ブランド**「acure(アキュア)」**です。
本記事では、サイネージや機械のスペックではなく、acureというブランドの戦略——運営体制、データ活用、オリジナル商品、そして先進的だった「イノベーション自販機」の撤退から得られる教訓——に焦点を当てて解説します。
acureとは——旧ウォータービジネスが育てたエキナカ専業ブランド
acureを運営するのは、株式会社JR東日本クロスステーションのウォータービジネスカンパニーです。JR東日本クロスステーションは、2021年4月1日にJR東日本リテールネットがJR東日本フーズ・JR東日本ウォータービジネス・鉄道会館を吸収合併して発足した会社で、旧JR東日本ウォータービジネスの自販機事業は社内カンパニーとして引き継がれました(出典: ダイヤモンド・チェーンストアオンライン、2021年)。
同社の発信によると、acureはJR東日本エリアのエキナカを中心に約8,000台の自販機を展開しています(出典: PR TIMES STORY、2025年)。
戦略の核は「ブランドミックス」
acureの自販機が一般的な自販機と決定的に違うのは、特定メーカーの商品だけを並べる「単一メーカー機」ではなく、**各飲料メーカーの売れ筋商品を横断して品揃えする「ブランドミックス」**を採用している点です。コカ・コーラもサントリーもキリンも、売れる商品なら同じ1台に並ぶ——駅という超一等地だからこそ成立する、小売業に近い発想の売場づくりです。
年間約2億件の購買データで「1台ごとの売場設計」
エキナカ自販機は1日を通じて多くの利用があり、acureでは年間約2億件に及ぶ購買データを収集・分析していると発信されています。時間帯別の売れ行きや購入層の特徴をもとに、1台ごとに最適な売場設計を行い、2025年は「売れ筋商品の安定供給」と「バラエティ感の確保」の両立をテーマに品揃えを調整していくとされています(出典: PR TIMES STORY、2025年)。
駅立地の自販機がなぜ強いのかは、駅構内・駅前広場の自販機設置戦略や通勤者の行動データで解析する駅ナカ自販機最適化戦略2026でも解説しています。
「イノベーション自販機」と acure pass の教訓
6年半で幕を閉じた先進プロジェクト
acureといえば、大型タッチパネルを備えた黒い筐体の**「イノベーション自販機」を思い浮かべる方も多いでしょう。2017年に展開が始まり、スマホアプリ「acure pass」**でのドリンク事前購入やQRコードによる受け取り、ドリンクのギフト機能など、"自販機の新体験"を提供してきました。
しかし同社は2023年8月、イノベーション自販機とacure passのサービスを2023年10月以降順次終了し、2024年3月31日をもって全サービスを終了すると発表しました(出典: JR東日本クロスステーション ウォータービジネスカンパニー公式リリース、2023年8月)。理由については「機体が当社の定める運用年数に達し、一定の役割を終えたため」と説明されています(出典: ねとらぼ、2023年10月)。日経クロストレンドは、約30万人規模だった会員制度の廃止を含むこの決断の舞台裏を報じています(出典: 日経クロストレンド、2024年)。
また、acure passでは「1本32円で毎日ドリンクが受け取れる」とうたう日本初の自販機サブスクリプションも展開され、第3弾では3,000人の新規会員を募集したと発表されていました(出典: PR TIMES)。先進的な取り組みの数々が機体の更新期を機に整理されたことは、**「デジタル施策は筐体のライフサイクルとセットで設計すべき」**という、自販機DXに取り組むすべての事業者への教訓といえます。イノベーション自販機の広告モデルそのものについては、デジタルサイネージ自販機の全貌。JR東日本「イノベーション自販機」の広告収益モデルをご覧ください。
オリジナル商品と地域戦略——acureの現在地
acure made: 自販機ブランドが「メーカー」になる
acureの独自性を象徴するのが、オリジナル飲料ブランド**「acure made(アキュアメイド)」**です。看板商品の「青森りんごシリーズ」は青森県産りんごを使ったストレート果汁100%ジュースで、発売から10年目を迎えたことが公表されています(出典: PR TIMES、JR東日本クロスステーション ウォータービジネスカンパニー)。東京駅や青森駅・新青森駅・弘前駅には「りんご専用自販機」が設置されるなど(2021年10月時点、出典: ソレドコ)、エキナカ自販機を"ブランドの旗艦店"として使う戦略が取られています。ミネラルウォーター「From AQUA(谷川連峰の天然水)」も同社の代表的なオリジナル商品です(出典: JR東日本クロスステーション公式サイト)。
ふるさとアキュア: エキナカ自販機を地域の発信拠点に
近年注目されるのが、地域産品をエキナカ自販機で販売・発信する**「ふるさとアキュア」**の取り組みです。自販機を単なる飲料販売機ではなく「地域とつながるホットスポット」と位置づける戦略が、同社のストーリー記事で語られています(出典: PR TIMES STORY)。また、メーカーや自治体向けにエキナカ自販機への「スポット出店」を募集する仕組みも公開されており、自販機の"売場貸し"というメディア的な活用が進んでいます(出典: エキナカ商事 スポット出店募集ページ)。
acureに学ぶ、これからの自販機ブランド戦略
acureの戦略から、一般の自販機オーナー・オペレーターが学べるポイントは3つあります。
- 立地の質×データ分析: 好立地に置いて終わりではなく、購買データで品揃えを磨き続ける
- オリジナリティ: 他では買えない商品(PB・地域産品)が「その自販機を選ぶ理由」になる
- 撤退の設計: デジタル施策は機体の運用年数を見据えて投資回収計画を立てる
エキナカでのacureとの競合・共存を考える事業者は、JR・私鉄駅構内自販機の設置戦略2026もあわせて参考にしてください。
出典・参考
- 約8,000台の自動販売機を支える現場の知見とデータ分析 アキュアはさらなる"選ぶ楽しさ"を提供できるのか?(PR TIMES STORY)
- "エキナカ自販機"が地域の魅力発信に!?「ふるさとアキュア」仕掛け人が語る地域とつながるホットスポット戦略(PR TIMES STORY)
- イノベーション自販機およびアキュアパスのサービス終了について(JR東日本クロスステーション ウォータービジネスカンパニー、2023年8月)
- JR東の"タッチパネル自販機"がサービス終了、順次撤去発表で惜しむ声 終了の理由を聞いた(ねとらぼ、2023年10月)
- 消えるJR東「黒い自販機」 30万人会員制度も廃止、舞台裏を追う(日経クロストレンド)
- 1本32円で毎日ドリンクが受け取れる⁉ 日本初の自販機サブスク 新規会員第3弾募集開始(PR TIMES)
- acure made「青森りんごシリーズ」は、発売から10年目を迎えます(PR TIMES)
- エキナカ自販機「acure」の飲み物はどうしてそんなに魅力的なの?(ソレドコ、2021年10月)
- ウォータービジネスカンパニー(JR東日本クロスステーション公式サイト)
- JR東日本、エキナカ事業4社を統合、新社名はJR東日本クロスステーション(ダイヤモンド・チェーンストアオンライン、2021年)
- JR東日本のエキナカ自販機に出店しませんか? スポット出店メーカー・自治体募集(エキナカ商事)
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